「祭り囃子に魅せられて-2」豊島正己さん(1969年・D卒)
左・正月に港区伝統文化交流館で獅子舞披露 / 獅子が頭を噛んで廻る間、投合いの笛を吹きます
豊嶋さんは工芸デザイン科を卒業後デザイン研究所に勤め、その後幅広いデザインを手掛けるデザイン事務所、有限会社モノリスを立ち上げました。デザイン事務所の経営の傍ら日本文化にも興味を持ち様々な邦楽器の演奏にも挑戦しています。
今回はその中で「祭り囃子」のお話しを寄稿していただきました。
祭り囃子は組曲になっていて御輿を先導する時と居囃子の時では曲が替わります、御輿を先導する時はその中の「投合い」という曲だけを演奏します。
また居囃子の時は主に「一ッ囃子」と言う「屋台」「昇殿」「鎌倉」「四丁目」「屋台・大上げ」の組曲を続けて演奏します。
「投合い」では太鼓は「テンテレツク・スケテンテン」と言う手だけを御輿が降りるまで延々と叩きます。
その太鼓に合わせて篠笛で「チヒリ・チヒリ・チヒーリ」など、基本フレーズはあるのですが即興で思いのままに演奏します。
従って奏者によって全然違う趣になりますし、同じ手をもう一度と言われてもそれは難しいのです。
因みにこの篠笛はそのピロピロという音色から別名「トンビ」とも呼ばれています。
「一ッ囃子」も太鼓はある程度決まった手を打ちますが経験者になると色々と替わり手を入れてきます。
次の曲に替わるきっかけや変奏に持っていくきっかけは笛からの合図で決まるのでお互いの息が合っていることが重要になります。
この笛と太鼓のやりとりがとても面白くてたまりません。
初心のうちはどういったことなのかさっぱり分かりませんでしたが、十年もやってるとなんとか分かってくる様になりました。
最初の頃に笛もやってみたいとお願いしたところ、「十年早いんだよ!」と怖いお姐さまに叱られてしまいました、十年も経ったら七十の爺になってとても笛なんか吹けるものじゃないと思って自主練をしていました。
三年ぐらい経った頃お姐様方が本家の保存会の方へ行くことになり、やっと笛も許される様になって良かったです。
ただまだまだ「大胴(大太鼓)」や「当り鉦」の難関が残っていますし、最近では仁羽や獅子舞もやるようになりましたが、そちらの方はまだまだこれからなのでどうやらお迎えが来るまでには全部は間に合いそうもないなと思う今日この頃です。