「今に通ずる、工芸高校で学んだ事」安田翔哉(2016年・A卒)

僕は2016年に工芸高校を卒業し、今は博報堂という広告代理店でCMプランナーとして働いています。その他にも漫画の仕事も並行して行なっています。
『ビッグコミック』『コロコロコミック』〈共に小学館刊〉
『コミックDAYS』〈講談社刊〉『アックス(旧名ガロ)』〈青林工藝舎刊〉など様々な年代の読者に向けて漫画を発表しています。

会社の仕事と、漫画の仕事の中で高校時代に学んだ事が今でも大きく役立っています。一番は「締め切りを守る」ということです。
高校に上がるまでモノづくりに関して、期間を設けて行うという経験がありませんでした。いわば趣味の範疇だったわけです。工芸の授業ではプロとして手を動かすという意識を教えて頂いたように思います。
締め切りを破れば、作品が良くても減点。機材を使える場所や時間も限られています。つまりは制約の中で作業をする。正直、学生当時は厳しいなと思う事もありました。しかし社会ではそれが当たり前だという事を身をもって痛感しています。
締め切りを破れば、先方に迷惑をかけてしまう。信頼も失う。時間配分などの制約の中でいかにハイクオリティな物を創作できるか、そういった事にも頭を動かしながら、手も動かす。その訓練を初めてさせて頂いた場所でした。

そしてもう一つは客観的視座を頂けた事。自分の作った物を評価してもらえる。
これも初めての経験でした。授業では毎回、作る物に対する指針があります。いわば、先生がクライアントなのです。その中で自分の作りたい物を表現するのですが、自己満足というわけにはいきません。相手がいる事を念頭に置いて、モノづくりを行う。フィードバックを頂ける。独りよがりではいけないという事を強く意識する事を学ばせて頂きました。

世の中のモノづくりには、ほとんど依頼主がいます。それを頭に置いて最大限のパフォーマンスを行う。社会では至極当たり前の事を、高校時代に教えて頂けた事は大きな財産になっています。
そんな中、くじけそうになる事もあります。その時には励まし合う工芸の仲間がいました。“作る事が好き”という共通点を持った友達は、大人になった今でも良く連絡を取り合っています。誰々はこんな物を作っている。こんな仕事をしている。
それが刺激になり、自分も頑張ろう!という興奮剤になっています。

僕は時々ふと、高校時代の夢を見ます。仲間と切磋琢磨し、青いながらも懸命に試行錯誤しながら作業に取り組んでいたあの頃に、潜在的に戻りたいと考えているようです。それだけ濃密で宝物だった3年間。そのおかげで今の僕はモノ作りを生業にできています。